横浜で食べられる本場台湾の味探し

グルメ

台湾妻人曰く「その店の滷味を食べれば本当の台湾の店かどうかが私にはわかる」

小さな頃から台湾で滷味を食べてきた台湾人なら、滷味を食べる事でその店の実力を知る事ができる。

「台湾料理」を掲げる店は日本にたくさんあるもののそのほとんどは中国大陸から来たエセ台湾料理店だと言われている。では、日本で台湾人による台湾人の味を出す店はあるのか?

横浜で本物の台湾料理を味わえる店を探してみました。

滷味とは?

滷味は台湾料理の一つです。各種スパイス、漢方薬にもなる材料、酒、醤油などで作った煮汁(滷汁)を使い、肉、内臓、昆布、練り製品、豆腐などを煮込んだ煮物で、台湾の街中ではどこでも目にする事ができます。夜市の屋台、食堂で朝から夜食の時間まで提供されています。

店によって滷汁の調合が異なり、滷汁の味が各店の味を決めていると言っても過言ではありません。台湾の味と日本で呼ぶ場合にはまず八角と言われますが、台湾では八角は使われているもののそれほど目立たないのが特徴です。

正宗126道台灣小吃という料理本によれば基本の滷味は布袋に香辛料や漢方材料を入れ滷包を作り、その滷包を煮出して作るとされています。滷包の中身は

八角
桂皮
甘草

正宗126道台灣小吃の滷包

これらの材料を煮出すには

湯頭
醬油
米酒
冰糖

正宗126道台灣小吃の滷汁

これらの材料を鍋に入れて煮出します。

冷たい滷味と温かい滷味

滷味には冷たい滷味と温かい滷味があります。冷たい滷味は先に煮込んでおいた物を切り分け、ネギなどの薬味と和えて食べます。温かい滷味は野菜やインスタント麺などと一緒に滷汁でサッと温め直します。どちらも台湾では人気があります。

街角の屋台でたくさん並んだ材料から自分の好きなものをカゴに取り、店主に渡してサッと料理してもらいます。食事時の人気店には人が集まります。

台湾料理店では台湾料理が出てこない!?

日本には台湾料理を掲げた店が多くあります。その多くはコンビニエンスストアを改造した店舗や居抜きの店舗で営業され、とにかくランチに大盛りで唐揚げやレバニラ炒めなど日本っぽい中華料理を提供するものです。

店内に入ってみると、それらの店は中国人によって運営される「台湾料理店」なので当然台湾の料理がありません。良くて台湾から輸入した皮蛋や香腸がある程度でしょう。滷味など仕込みに時間がかかる料理はありません。

日本っぽい中華料理を安くお腹いっぱいという需要には適していますが、台湾料理を食べたいという場合には足を向けるべきではないでしょう。

台湾の店主なら台湾料理か?

店主が台湾人なら台湾料理が出てくるかというとそうでもありません。日本では台湾料理は馴染みがなかったため、台湾人の店主も商業的に成功しやすい日本人受けするいわゆる中華料理を出すことにした人も多いでしょう。

台湾から日本に渡った台湾人の中には、もとは大陸から来た外省人もいたでしょう。それらの人々は中国大陸各地の料理を提供したと考えられます。

台湾を前面に押し出している店でも、実際に行って食べてみると厨房から聞こえる中国語の発音は大陸の物という店がありました。見た目は似せていますが、味ははっきりと台湾の物ではないという店もありました。こればかりは実際に食べてみないと台湾料理かどうかはわからないところです。

台湾料理店と台湾レストラン

台湾料理店と台湾レストランは厳密には異なります。例えば台湾の有名なレストラン鼎泰豐(ディンタイフォン)は台湾レストランです。しかし、台湾料理の店かと言われると微妙に違います。

鼎泰豐で出される料理の多くは第二次大戦後に中国大陸から渡ってきた料理で、台湾で食べられるようになってからまだ日が浅い物が多いです。(難しいことを考えずに美味しければそれで良いという考え方もOKです)

実際に食べてみて本物の台湾料理だった横浜の台湾料理店を紹介

では実際に食べてみて本当に台湾の味が再現されていた店はどこでしょうか?二件の台湾料理店を訪れてみました。

銭爺

横浜の中華街から歩いて30分ほど。横浜地下鉄阪東橋駅の近くにある、よこはまばし商店街。メインのアーケードから細い路地へ折れすぐの場所に銭爺はありました。

カウンターのみ7席あまりの店は食事時にはすぐに満席になります。店主は台湾人で名字は銭さん。店名の銭爺は苗字から名付けたようです。

お店は店主と同じく台湾人の奥さんと二人で主に店を切り盛りしています。店内は日本語と中国語と台湾語が賑やかに飛び交い商売は繁盛していて、店の壁に掲げられたメニューを見ればどれも台湾でお馴染みのものが並びます。

この日は排骨飯と蝦餛飩麵を注文しました。カウンターに並んだちょっと厚めの排骨と滷蛋を見たら注文しないわけにはいかないでしょう。滷味が有るか聞いたところ素雞か豆干が有るとのことで、店主が「台湾に帰ってないなら素雞にすると良いよ」と言うので素雞も追加でお願いしました。

素雞滷味

素雞は厚めの湯葉を巻いて鳥のささみのようにした食材を使って滷汁で煮た物となります。銭爺では切った滷味にパクチーとネギ、ごま油、調味料を和えて出してくれました。添えられた豆瓣醬を少しだけつけて食べるととても美味しいです。結構辛いので最初は少しだけにしておきましょう。

この滷味の味は本当の台湾の味付けです。余分な香辛料や調味料が入っていません。これならこのお店の豬腳や滷肉、滷蛋は味が保証されたも同然です。

蝦餛飩麵

エビ入りのワンタンを麺に追加したワンタン麺。紅蔥頭(炒めた台湾エシャロット)とあっさりのスープ。量がたっぷりですがさらっと食べる事ができます。これは台湾の味です。次回は別のものを頼みたいです。

排骨飯

店に入ると目に飛び込むカウンターの上に並べられた少し厚目の排骨。台湾の家で作った排骨のようです。これを使った排骨飯はこの店を訪れたら一度は注文したい品です。排骨の上にはさらに魯肉と滷蛋もトッピングされ、これ一つで様々な味をいっぺんに楽しむ事ができます。

銭爺は台湾人が台湾の味を出す店でした。次回は豬腳飯や控肉飯を食べてみたいと思います。

萬和樓

横浜中華街の中にある関帝廟。この横に台湾家庭料理の萬和樓があります。

中華街には食堂やレストランが立ち並んでします。しかしながら台湾の味を台湾人が作る台湾料理の店はほぼ消滅してしまったようです。最近の台湾ブームに乗って台湾で出される料理をいくつか出している店もあるのですが、実際に食べてみると料理人が中国人のため味付けが台湾とは違ったものとなってしまっている店もありました。

その点、萬和樓で食べる事ができるメニューはほぼ台湾の味となっています。しかも、このお店では台湾のベジタリアン食(素食)も食べる事もできます。

豬耳朵

豚の耳をじっくりと煮た滷味で、その切り方は美味しく食べるために重要な技術の一つです。耳の中心部にある軟骨と周囲のゼラチン質がバランス良く揃って初めて美味しい豬耳朵になります。慣れていない人が切ると軟骨だけ、または柔らかい肉の部分だけとなって美味しさが半減してしまいます。

この店の豬耳朵は味付けも食感も完璧でした。ビールのお供にもなるでしょう。日本人は醤油をかけたくなってしまうそうですが、すでに味付けされているので何もかけずにそのまま頂きましょう。

水餃

水餃や小麦粉系の食事は台湾全国で食べられていますが、元から台湾にあるのではなく、国民党が中国大陸から渡ってきた際にもたらされた物です。台湾の街角で食べる事ができる水餃の味を横浜中華街でも食べる事ができます。

麻醬麵の胡麻タレに絡めて食べるとまた別の美味しさ。

麻醬麵

ゴマのタレと酢が絶妙に混ぜ合わせられた麻醬麵。まず食べる前にしっかりと麺とタレを混ぜます。このお店の麻醬麵は酢が少し強めでした。しかし、これも美味しい麻醬麵。台湾でも材料費の関係で麻醬麵だけは少し価格が高くなりますが日本でも同じ傾向のようです。

お店の情報

錢爺

  • 〒232-0021 神奈川県横浜市南区真金町2丁目18 [map]
  • 045-252-6211
  • 11:00 – 21:00
  • 年中無休
  • 店内禁煙

横浜地下鉄阪東橋または京急黄金町から徒歩。横浜橋商店街の中。

萬和樓

  • 〒231-0023 神奈川県横浜市中区山下町139[map]
  • 045-663-3113
  • 11:00 – 21:30
  • 月曜定休
  • 店内禁煙

横浜中華街、関帝廟横。

どちらのお店ももう一度いきたくなる(絶対行く)お店でした。まだまだ台湾人による台湾料理の店はあるかもしれません。引き続き探していきたいと思います。

台湾料理についてもうちょっと知りたい時にどうぞ

一口に台湾料理と言っても普段食べられているいわゆる「中華料理」と何が違うんだろう?と気になった方には台湾料理とはどんな料理なのかを台湾400年の歴史を簡単になぞりながらご紹介します。

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